全部経験になるんだから、失敗なんてない。浅野美奈弥の暮らしを彩る「直感的」なモノ選び。

全部経験になるんだから、失敗なんてない。浅野美奈弥の暮らしを彩る「直感的」なモノ選び。

今回、お話を伺ったのは浅野美奈弥さん。モデルでありながら、ケータリングサービス「美菜屋」を営む料理家でもあり、かと思えばフルマラソンをこれまで10回も完走したランナーでもあるなど、さまざまな顔を持っています。 軽やかに人生の道を選び、歩んでいるように見える浅野さん。今の生活ができあがるに至るまでには、どんな出来事や価値観の変容があったのでしょうか。

     

    1日の始まりは羽釜でお米を炊くことから


    浅野さんのお家は、3階建ての一軒家。今年の6月にリノベーションが完了し、住み始めたばかりなのだそうです。

    浅野さんの1日の始まりは、羽釜でお米を炊くところから。

    「朝はいつも7時くらいに起きて、まずお米を炊きます。羽釜を使ってるんですけど、これが本当にオススメで。使い方も簡単で、20分くらいですぐ炊けるし、おいしいのでもう手放せなくなりました」


    *2階にあるキッチン。タイルは、こだわりの赤目地


    「私も友達に教えてもらったんですけどね(笑)」と軽やかに笑う浅野さんに、朝食のお決まりのメニューを聞いてみると、「ご飯とみそ汁」とのこと。

    羽釜で炊いたご飯と、冷蔵庫の余りものでサッと作ったみそ汁を食べながら、仕事のメールをチェックするのが浅野さんの日課なのだとか。

    朝7時からそんなにテキパキと動いているなんて……という視線を向けると、「でもパジャマのままですからね」とのんびりした言葉が返ってきました。



    キッチンスペースの中央には、特徴的なL字のカウンターテーブル。

    仕事で作っているレシピの撮影に加え、普段の食事を行なうのもこの場所です。ここには、コンパクトなキッチンスペースを最大限活用するためのアイデアが詰まっていました。


    *カウンターテーブルの下は食器棚に

    「うちみたいに縦に細長い家だと、アイランドキッチンにするのは難しいんです。かといって、この空間にダイニングテーブルを置いてしまうと、狭いし圧迫感も出ちゃうじゃないですか。それで、一体型のカウンターテーブルを作ってもらったんです。

    料理を作って振り返ると、そのままカウンターで食べられるので便利ですよ。カウンターの内側を広く作っているので、両サイドから囲んでダイニングテーブルのように使うことができるのも気に入っています!」


    *大好きな「アーチ」を象った棚は、お気に入りのアイテムを並べるディスプレイ棚



    「キッチンのトーンは、『美菜屋』と合わせてピンクを基調にしています。サーモンピンクに近い色ですね。このインパクトある壁紙はアメリカのブランドなんですけど、実は『美菜屋』の2階でも同じブランドの壁紙を使ってるんです」



    幾何学模様がかわいい壁紙ですが、いざ貼るとなると思い切りが必要だったはず。ところが、浅野さんは「派手ですよね。でも壁紙だから、イメージと違ったり、飽きたりしたら剥がせばいいんですよ(笑)」と朗らかな答え。

    「むしろ、部屋の中で壁紙が一番思い切って変えやすいんじゃないですかね。私は基本的に壁紙は変えたいタイプです。ただ、私はめちゃくちゃ感覚で考える人間だから、本当にその時の気分で選んでます。もしちょっとでも違う気分だったら、この壁紙になってなかったかもしれないですね。

    なんというか、ご飯を食べるときも『いまこれがめっちゃ食べたい』という欲求に従うようにしていて。それは、体が必要だから求めてると思うんです。健康的なものを食べたいときは栄養が足りてないときだし、甘いものを食べたいときは脳が疲れてるときみたいな。なので、モノの選び方も直感に従うようにしています」

     

     

    友達のブランドや、好きな色・形が集まった部屋



    キッチンの反対側にあるリビング。自然光がよく入り明るいため、気持ち良く過ごせそう。

    東京に多い細長く縦長の住居は、注意しないと部屋に圧迫感が生まれ、狭く見えてしまいがちですが、浅野さんの部屋は「収納家具を置かずに、壁に棚を造作」したことで、広く、スッキリした空間となっています。



    「この中では、ラグが一番気に入っています。友達が作っているんですけど、『STUDIO THE BLUE BOY』というブランドです。ラグだけじゃなくて、ホームウェアやクッション、お香まであって、全部かわいいんです」



    「インテリアは、『ここさえ押さえておけば大丈夫』というブランドを自分の中で5つくらい持っていて。部屋作りのベースは、そういったブランドで作ってますね。

    でも、友達のブランドから買うことも多いですよ。ソファに掛けてあるタオルブランケットも『MYTONE』という友だちのブランドなんです」

    そういったブランドは、どうやって見つければいいのか。浅野さんが活用したのは「Instagram」。



    「普通に『地名+〇〇』みたいに、いろいろなキーワードで検索して、1回1時間くらいずっとリサーチします。ブランドだけじゃなくて、飲食店とか宿も同じように探してますね。

    気になったとこは、全部『Google Map』に保存しておいて、実際に行く。このとき、行った場所は『Instagram』のストーリーズにも載せるようにしてるんですけど、これは友達にも教えたいってのもあるし、投稿を見た友達が『ここもオススメだよ~』って逆に教えてくれることもあって、良いですよ。ありがたいです」


    ただ可愛いからと買った照明。届いてみたら「想像以上に大きかった」そう

    「あとはブランド関係なくですが、私は『部屋に合うかな』とか、『この場所に置こう』とかは、買うときにはあまり考えてなくて。見た目が可愛ければ買っちゃいます(笑)」

    やっぱり直感的なモノの選び方をしている浅野さん。

    しかし、「部屋に合うかは考えてない」とは言うものの、ハッキリとしたまとまりを感じるこの部屋。何がこの部屋を調和させているのでしょうか。

    「たぶん、好きなテイストが自分の中で固まってるから、好きなモノを集めていったら自然と似たテイストにまとまったのかなあ。改めて見てみると、全部バラバラに買ってるはずなのに、曲線が多いとか、似た形が多いですね」



    「あとは、カラフルなアイテムが好きで。もともと緑とピンクが好きなんですけど、最近はそこにオレンジや黄色を加えたくなって。このカラーリングは自分の中ではよくやりがちですね」

     

     

    全部経験になると考えると、失敗なんてない



    直感を信じて物事を決めていく浅野さんですが、感覚的に道を選んでいるがゆえに想定とは違う道に人生が転がり出すことも珍しくありません。それは、この家のときも。

    「『美菜屋』を始めてからずっと怒涛の日々だったので、自分のための時間が作れていなかったんですよね。でも、『美菜屋』が組織化されて、私がいなくてもお店が回るようになった今なら、1人の料理家としてもっと自分の料理の研究ができるなあと。

    この家を職場兼自宅として、ここで自分用のお弁当をたくさん作ったり、いろんなバリエーションの食事を作ったりして生活してみたい。そう思って、デザイナーさんに内装を相談しながら作り上げたのがこの家なんですけど……完成してからすぐに2拠点生活を送ることになりまして、家にいる時間は少ないんです(笑)」


    *3階にある衣装部屋。服を片づけるのが苦手なため、オープンクローゼットにしているそう

    実は浅野さんは、今年の8月に結婚したばかり。愛媛県でみかん農家を営むパートナーとの生活のため、現在は愛媛と東京の2拠点生活をしています。自身でも「まさか愛媛に行くなんて」と笑ってしまうほどの生活の変化ですが、それをえいやと飛び越え、新しい人生の道へと走り出すことができる強さが、浅野さんにはあります。

    それは「失敗を失敗とさせないようにしてる」からなのだそうです。

    「『美菜屋』を始めた頃は、いろいろな不安を抱えていた時期でもあって、意識的に新しいことに挑戦をしていました。その一つが「走ること」で、初めてフルマラソンに挑戦して、完走したんです。正直、完走なんてできないと思っていたので、走り切れたときは自分にすごく自信がつきました。

    それからは、何でもやってみようという気持ちになって、失敗を恐れずに飛び込めるようになりました。そのうち、自分の現在地もこれからの未来もすべて過去の行動や挑戦と繋がっているんだなと思ったんです。そう考えると、失敗なんてないんですよね。全部経験になるんだから」



    浅野さんのあり方は、楽観的に見えるかもしれません。しかし、だからこそ自分の直感を信じることができる。

    「リビングにある植物とか、買ったはいいものの、いざ部屋に持ってきたら高さがありすぎて入らなくて、切ったんですよ。失敗したかって思いましたけど、意外となんとかなるんですよね(笑)」

     

     

    実際に体験して、感じたことが「自分だけの感性」



    「実際に体験してみることが大事」と浅野さんは言います。

    「本やネットを通して知っているだけじゃ分からない感覚ってあるんですよ。だから、何でも実際に体験することが大事です。いろいろな場所に行って、体を動かしたり、見たり、人と話したりして、感じたことが自分だけの感性になるんだと思います。私も誘われたら何でも行きますし、周りのセンスが良いと感じる人たちもみんな、活動的な人が多いですね」

    難しいのは、そのきっかけをどう掴むか。浅野さんにとって、それはフルマラソンでした。

    「その人なりのスイッチが、きっとどこかにあるはず」

    失敗を恐れずに、まず行動してみること。浅野さんの纏うほどほどにゆるく、軽やかな空気感は、たくさんの行動の積み重ねから生まれているのかもしれません。

    「失敗なんてない」と聞くと、自分の普段の生活の範囲内からでもいいので何か新しいことに挑戦してみたくなります。「意外となんとかなる」と楽観的に考えることは、自分の生活に彩りを加えるアイデアだなと、感じました。

     

     

     

    文:Daiki Hayakawa

    編集:Takumi Inoue / Nami Nakagawa

    写真:Ryo Tsuchida

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